スポーツイベントの予測市場の成長が、リーグ主導のベッティング取引所への道を開く
米国のスポーツリーグは、1992年から2018年までの25年以上にわたり、ネバダ州以外での合法的なスポーツベッティングの拡大に対して強硬な反対姿勢を示してきた。しかし、2018年の「Murphy v NCAA」判決を機に、スポーツベッティングが全国で合法化される道が開かれた。これにより、主要リーグも徐々にこの流れに適応し、まずMLB(メジャーリーグ・ベースボール)とNBA(ナショナル・バスケットボール・アソシエーション)が公式のベッティングオペレーターを発表し、ライセンス契約やスポンサー契約を結ぶ形で関与を始めた。
しかし、今後はさらに大きな変化が訪れる可能性がある。
CFTC規制下のスポーツベッティング取引所の可能性
米国のスポーツベッティング市場に新たな展開をもたらしているのが、商品先物取引委員会(CFTC)の規制対象となるスポーツイベント契約である。これにより、Crypto.comやKalshiといったプラットフォーム上で、スポーツイベントを対象とした取引が合法的に行われる可能性が高まっている。
フロリダ州立大学のライアン・ローデンバーグ教授は、「CFTCがスポーツ取引所を正式に認可すれば、スポーツリーグ自らがこうした取引所を運営し、既存のスポーツベッティング業者との競争に乗り出すだろう」と予測している。
CFTCの対応と今後の展開
CFTCは現在、以下の3つの対応策を検討しているとされる。
- 何もせず、事業者がスポーツ関連の取引オプションを「自己認証」することを許可する。
- スポーツ取引を公式に承認し、「ノーアクションレター(特定の取引を不問とする通達)」を発行する。
- 事業者に対しスポーツ取引の提供を中止するよう命じ、CFTCが精査を行う。
さらに、CFTCがKalshiの政治市場取引を許可した2024年9月の判決に対する控訴を取り下げる可能性もある。現トランプ政権は、規制緩和と暗号資産市場の拡大を推進しており、ドナルド・トランプ・ジュニア氏がKalshiの戦略顧問に就任したこともあり、CFTCがKalshiに対して制限をかける可能性は低いと見られる。
スポーツリーグの取引所運営のメリット
ローデンバーグ教授によると、スポーツリーグが取引所を運営することには以下のメリットがある。
- 取引手数料の収益: 取引所は、ベットの結果に関係なく手数料を徴収できるため、リーグの収益源となる。
- 公平性の維持: 伝統的なスポーツブックとは異なり、取引所は「胴元」としての役割を持たず、特定の結果に依存しない。
- リーグの主導権確保: これまでスポーツリーグは、「ベッティング業者がリーグのコンテンツを利用して利益を得ている」と批判してきたが、取引所を運営することでその収益を直接得ることが可能になる。
「公式リーグデータ」の活用とベッティングの未来
近年、スポーツリーグは「公式リーグデータ」の販売を強化しており、より正確でリアルタイムなデータをスポーツブック運営者に提供することで収益を上げている。取引所を運営すれば、この公式データの需要がさらに高まり、リーグの収益拡大につながると考えられる。
現在の法制度では、スポーツリーグが直接ベッティングから利益を得ることを禁止する規定は存在しない。したがって、CFTCがスポーツ取引市場の合法化を進める中で、リーグが取引所を運営する可能性は極めて高いといえる。
今後の展開と注目点
KalshiのCFTC申請書には、「NFL、NHL、NBA、NCAAなどのリーグからの承認を得ていない」という注釈が付されている。これは単なる法的表記かもしれないが、リーグ側との何らかの交渉が行われた可能性もある。
ローデンバーグ教授は、「Kalshiが議会の承認を得ずに政治市場の取引を提供したように、スポーツリーグとの事前協議なしにスポーツベッティング市場に参入した可能性がある」と指摘している。
今後、CFTCの決定とリーグの動向により、米国のスポーツベッティング業界に大きな変革がもたらされる可能性がある。
引用元:https://www.casinoreports.com/cftc-league-operators-rodenberg/