タイのカジノ合法化が現実味を帯びる:日本のカジノ解禁を追い風に統合型リゾート(IR)法案が可決される可能性

アジア

タイで統合型リゾート(IR)を合法化する法案が、2025年5月までに可決される可能性が高まっています。この法案が承認されれば、2029年までに国内初のカジノを含むエンターテインメント施設がオープンし、合法的なギャンブル市場が形成される見通しです。

法案の進展状況

2024年末までに内閣を通過し、国会での審議に移るとされています。もし議会で可決されれば、シンガポールのIRモデルを参考にしたリゾート施設がタイ国内で展開されることになります。各施設には、ホテル、スタジアム、コンサートホール、テーマパークなど少なくとも4つの非ギャンブル施設が含まれる予定です。また、レストランやショッピング街、クラブなども併設される計画です。2029年に予定されている日本でのカジノ解禁より早く開業させたい思惑があるようです。

法案に関わるプロミン・ルートスリデット事務総長は、11月15日のインタビューで「早ければ来年の中頃には法律が成立する見込みです」と述べています。

市場規模と経済効果

法律が成立すれば、2029年までに少なくとも5つのIRがオープン予定で、バンコクに2つ、パタヤ、チェンマイ、プーケットにそれぞれ1つずつ設置される計画です。シティグループの推計によると、成熟したタイのギャンブル市場は年間91億ドル(約1兆4000億円)の収益を生み出す可能性があり、シンガポール(年間38億ドル)を超える第3位の市場となる可能性があります。

ライセンスと運営要件

法案では、ライセンス申請者に以下の条件が課されます:

  • タイ国内に法人登記していること
  • 少なくとも2億8600万ドル(約447億円)の資本金を持つこと
  • 初期費用として1億4190万ドル(約222億円)を支払い、さらに年次費用として2880万ドル(約45億円)を負担すること

ライセンス期間は30年で、5年ごとに審査が行われ、10年単位で更新可能です。税率は17%と低めに設定されていますが、最終決定はされていません。

主要投資家の動向

すでにマカオのギャラクシー・エンターテイメント・グループ、MGMリゾーツ、ラスベガス・サンズなど、世界的な企業がタイ市場への参入を検討していることが報じられています。

社会的な影響と懸念

ギャンブルが現状違法であるタイでは、国民の60%にあたる約3042万人が何らかの形でギャンブルをしているとの調査結果があります。この多くが違法な手段で行われており、一部の人々は近隣諸国(ラオス、カンボジア、ミャンマー)で合法カジノを利用しています。

政府は違法ギャンブルを抑制する目的で、地元住民には入場料144ドル(約2万2500円)を課す計画です。一方、外国人観光客は無料で入場可能です。

経済的メリット

IRの開業により、1施設あたり1万人以上の直接雇用が創出される見込みです。これにより、少なくとも5万人以上の新たな雇用が生まれ、パンデミック後の経済回復を後押しする効果が期待されています。また、観光収入や税収の増加も見込まれており、労働大臣ピパット・ラチャキットプラカーン氏は「カジノ合法化により、国家収入が増加し、違法ギャンブルの問題が軽減される」と述べています。

今後の課題

法案成立後、政府と規制当局は、厳格な運営基準と公正な市場競争を確保するための詳細な規制を整備する必要があります。また、依存症対策や社会的な影響への対応も重要な課題です。

2025年5月に法案が成立すれば、タイはアジアにおけるギャンブル市場の新たな中心地として注目されることでしょう。

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