タイ政府は2025年1月13日、カジノを含むエンターテインメント複合施設を合法化する法案を内閣で承認しました。この法案は今後議会に送られ、可決されれば、経済復興と観光産業の強化が期待されています。
法案の概要と期待される影響
タイのパエトンターン・チナワット首相の秘書官プロムミン・レートスリデット氏によれば、この法案が成立すれば、7〜9か月以内に法律として施行される可能性があるとしています。コロナ禍からの経済回復が遅れるタイにとって、カジノを含むエンターテインメント施設は重要な成長戦略と位置付けられています。
複合施設の開業は2029年を目指しており、日本の大阪に計画されているMGMリゾーツのカジノリゾート(2030年開業予定)よりも早期の開業を目指しています。
2023年に実施された政府の調査によると、エンターテインメント複合施設の初年度の観光収益は4,066億バーツ(約12億ドル)に達すると予想されています。また、このプロジェクトは最大20,000の新規雇用を生み出す見込みです。
計画されているカジノ施設の場所
法案では、以下の地域に5つのカジノライセンスが付与される予定です:
- バンコク(2か所)
- チェンマイ
- プーケット
- 東部経済回廊(チャチューンサオ県、チョンブリー県、ラヨーン県)
すでに世界的なカジノ運営会社7社がライセンス取得に興味を示しており、マカオを拠点とするメルコリゾーツ&エンターテインメントはバンコクに事務所を開設する予定です。また、MGMリゾーツ、ギャラクシー・エンターテインメント・グループ、マレーシアのゲンティン・グループも市場参入を検討しています。
反対意見と懸念
一方で、この法案には反対意見も出ています。タイの法律諮問機関である「国家法務評議会」は、法案がカジノに偏重しており、観光全体の魅力を高める包括的な内容に欠けていると指摘しています。
また、ギャンブル撲滅団体「Stop Gambling Foundation(SGF)」は、この法案をシンガポールの統合型リゾートモデルに劣る内容だと批判。非ゲーミング施設やギャンブル依存対策、課税制度に関する詳細が不足していると主張しています。
オンラインギャンブルの可能性
さらに、元首相で現首相の父親でもあるタクシン・チナワット氏は、オンラインギャンブルの合法化を追加する提案を示唆しました。同氏によれば、タイではすでに200万〜400万人がオンラインギャンブルに手を出しており、年間約5,000億バーツが失われているといいます。
タクシン氏は「税率20%を適用すれば、年間1,000億バーツ以上の税収を見込める」と述べ、オンラインギャンブル合法化を「一段と魅力的な選択肢」と表現しました。
タイのエンターテインメント複合施設およびオンラインギャンブルの合法化は、観光収益の拡大と経済復興に大きく寄与する可能性があります。一方で、社会的影響や依存症対策を巡る議論も深まることが予想されます。今後の議会での動向が注目されます。