NBAの新シーズンを迎え、BetMGMやCaesars、DraftKings、ESPN Bet、FanDuelなど主要なブックメーカーが、10日間契約やツーウェイ契約の選手に関するベッティングプロップ(試合内での成績に賭けるオプション)の「アンダー」(対象のベット項目においてブックメーカー側が用意した基準値を下回る予想する賭け方)を提供しないと発表しました。これは、これらの選手が長期契約選手に比べて収入が不安定なため、意図的にパフォーマンスを落とすインセンティブが生じる可能性があると考えられているからです。この動きを「ジョンテイ・ポーター効果」と呼ぶ人もいます。
ポーター事件が引き起こした変化
ジョンテイ・ポーターは昨シーズン、怪我や病気を理由に試合を早退し、自らのパフォーマンスを落とすことで賭けで利益を得ようとしました。これによりポーターは詐欺共謀罪を認め、NBAから永久追放されました。この事件以降、ブックメーカーはベッティング市場の透明性や公正性を保つために、試合の公平性を損なう行為を防ぐ取り組みを行うようになりました。
この方針の変更に対して、VSiNのNBAアナリスト、ジョナサン・フォン・トーベル氏は、NBA以外のリーグにまで影響が及ぶ可能性があると警告します。彼は「WNBAや他のリーグでも、低給与の選手に対してアンダーをなくすといった対応がなされれば、ブックメーカーはべっティング市場でさらなる一方的な優位を得る可能性があります」と述べ、現行のべっティングシステムに対する懸念を示しました。
一方的なマーケットの問題
スポーツベッティングのプロであるクリス・マセロ氏は、低給与で活躍機会が少ない選手に賭けオプションを提供すること自体が問題であると指摘しています。「なぜ12番目の選手のリバウンド数や得点数にまで賭けを設ける必要があるのか?」と述べ、こうした賭け市場が今後も存在すること自体に疑問を投げかけました。
また、ベッティング情報サイト「Unabated」のステファン・バイロン・キーシュ氏は、こうした選手に対する賭けが予測の難しさを増すと説明しています。「10日間契約の選手や試合に出るか不明な選手に対する賭けは、通常の選手よりもデータ不足で予測が難しく、ブックメーカーにとってもリスクが高いのです」と語りました。
未来のリスクと期待
一部の専門家は、今後も主要なブックメーカーがアンダーを制限する可能性について懸念を示しています。マーケットが一方的になると、ブックメーカーにとってのリスクが軽減され、賭けのオッズが高く設定されるなど、公正な価格設定が損なわれるリスクがあります。
スポーツ賭博業界の歴史を振り返ると、ブックメーカーが賭け市場でのリスクを回避しようとする傾向は新しいものではありません。1990年代のアイビーリーグのフットボール市場が縮小されたように、今後も賭けの種類やオプションが限定されることも予想されます。しかし、それが原因で独立系のブックメーカーが市場で人気を博し、公正な価格でのベッティング提供を行う場面が増えるかもしれません。
このように、ジョンテイ・ポーター事件をきっかけとしたベッティング市場の変化は、NBAだけでなく、今後の賭け市場全体に影響を与える可能性があります。