オンラインギャンブルの中心地として知られるキュラソー。そのギャンブル規制当局であるGaming Control Board (GCB)が、ライセンス制度改革を巡る汚職や資金洗浄疑惑に対して強く反論しました。
問題の発端:野党政治家の告発
これらの疑惑は、キュラソーの野党Real Alternative Partyの政治家ルイジ・ファネイト氏が提起したものです。同氏は、11月25日に検察庁に報告書を提出し、「違法な形でライセンスが発行され、財政的損失を引き起こしている」と主張しました。
ライセンス改革の背景
2022年7月、キュラソーは新しいギャンブルライセンスの規制枠組み「National Ordinance for Games of Chance (LOK)」を発表しました。この改革は透明性を高め、運営者に対する厳しい基準を導入することを目的としています。
しかし、ライセンス申請の急増により、制度の完全な実施は当初の予定よりも遅延しています。2023年9月以降、既存のすべてのライセンス保有者は新制度の下で再申請が必要となりました。
疑惑の核心:汚職と資金洗浄の主張
ファネイト氏は、特に財務大臣ハビエル・シルビアナ氏が規制を無視してライセンスを発行していると非難しました。この主張に対してGCBは、「ライセンスの発行は完全にGCBの管轄下にあり、シルビアナ氏が介入する余地はない」と明確に否定しました。
さらに、ライセンス申請者は厳格な審査を受けており、申請料はすべて政府の公式口座に直接支払われるため、不正行為の余地はないとしています。
プレイヤー保護と新たな取り組み
GCBは、プレイヤーからの苦情処理はライセンス保有者の責任であるとしながらも、新制度ではAlternative Dispute Resolution (ADR)(裁判外紛争解決)を義務化することで、より独立した苦情処理を進める計画を明らかにしました。
ADRでは調停や仲裁を通じて迅速かつ公正な解決を目指します。今後、プレイヤーからの苦情やADR機関の報告は、GCBのリスクベース監督プロセスに活用される予定です。
BC Game事件の対応
最近話題となったキュラソーライセンス保有者BC Gameの破産裁判についてもGCBは言及しました。この事件では、プレイヤーへの支払いが滞ったことが問題となりましたが、GCBはこの破産が「支払い不能ではなく、管理上の問題によるもの」と説明しています。現在、信託管理人が任命され、プレイヤーへの支払い手続きが進行中です。
海外での違法運営への対応
さらに、キュラソーライセンス保有者が現地のライセンスを取得せずに欧州市場で運営している事例についても批判が集まっています。たとえば、BG Gameは2023年10月にオランダで84万ユーロの罰金を科されました。
GCBは「外国の規制違反について介入する権限はない」としながらも、外国当局からの正式な決定に基づき、重大な違反に対しては適切な措置を取るとしています。
今後の展望
GCBは、今回の疑惑を受けて制度の透明性をより一層高める姿勢を示しています。しかし、ライセンス制度改革の遅れや運営者への信頼問題は、引き続き同国の課題として残るでしょう。
この事件は、オンラインギャンブルの規制がいかに複雑で多面的であるかを浮き彫りにしています。透明性と公正さを確保しつつ、プレイヤー保護と業界の発展を両立させることが求められています。