ブラジルの賭博・宝くじ業界の団体「ANJL(全国賭博・宝くじ協会)」は、スポーツベッティング法が違憲と判断された場合、ブラジルでの違法賭博市場が拡大すると警告しています。この議論は、11月11日から始まったブラジル最高裁判所(STF)の公聴会で行われており、賭博の合法性やその影響について複数の業界団体が意見を述べています。
背景:スポーツベッティング法の違憲審査
現在審査されているのは、2023年に成立した「法第14,790号」で、2025年1月1日からブラジルでのスポーツベッティングの合法化が予定されています。しかし、国内の第三位の労働組合である「全国商品・サービス・観光業連盟(CNC)」が、この法律を違憲であると主張し、違憲審査請求(ADI)を提出しました。このADIの審査官であるルイス・フックス判事は、公聴会で「貧困層や未成年者への影響が問題視されており、緊急に対処すべき問題」と述べ、法の見直しを求めています。
ANJLの懸念:雇用と経済への影響
ANJLは、法律が違憲と判断されれば、合法市場が崩壊し違法市場が拡大する可能性があると指摘しています。また、これにより合法市場で生まれると見込まれていた60,000の新規雇用や、初年度で約40億レアル(約700億円)の収益も失われる恐れがあります。
ANJLの法務担当ディレクターであるピエトロ・カルディア・ロレンツォーニ氏は、「もし違憲とされれば、病的賭博や違法賭博が増加し、問題の解決どころか悪化させる」と述べました。また、ロレンツォーニ氏は、賭博広告の禁止も違法業者に有利になるとし、広告は合法市場と違法市場を区別するための重要な手段であると説明しています。
賭博業界への批判と反論
一部の業界団体は、賭博の増加が消費者の支出行動に悪影響を与えていると主張しています。例えば、ブラジル小売消費協会(SBVC)の調査によれば、月収の一部を賭博に費やしている23%のブラジル人が服の購入を控え、11%が医療費を削減したとされています。
これに対し、ロレンツォーニ氏は「賭博の影響は国内総生産(GDP)の約0.23%に過ぎず、消費支出への影響はわずか」と反論しています。また、2018年に法律が成立してから実際の施行までに長い遅延があったことが違法賭博サイトの増加につながったとも述べました。
現在の違法市場の状況
レギュラス・パートナーズの推定によると、現在のブラジルの違法賭博市場は34億ドルに達しており、特に新型コロナウイルス感染症の影響でデジタル利用が進んだことが背景にあるとされています。
ブラジルのスポーツベッティング市場が今後どうなるかは、最高裁の判断にかかっていますが、違憲とされた場合には大きな経済的影響が避けられないと考えられます。