ペンシルベニア州、カジノ自己排除規則の緩和を提案し懸念を呼ぶ

アメリカ

ペンシルベニア州ゲーム管理委員会(PGCB)は、カジノの自己排除(セルフ・エクスクルージョン)規則を緩和する可能性を検討しています。この提案では、自己排除期間が終了した問題ギャンブラーが、申請を行わなくても自動的にカジノに再入場できるようになります。現在のルールでは、期間終了後に正式な申請を行い、自己排除リストからの削除を求める必要がありますが、これを廃止する方向です。

提案の背景と新ルールの内容

この変更案は、カジノに加えてオンラインギャンブル、ビデオゲーム端末、ファンタジースポーツにおける自己排除規則と一貫性を持たせることを目的としています。これらの分野では、自己排除期間の終了時に自動的にリストから削除される仕組みが採用されています。

PGCBの担当者は、現在の自己排除ルールの運用にかかる行政コストの負担を理由に挙げています。自己排除リストに登録されている人が誤ってカジノに入場した場合、管理委員会のスタッフが調査を行い、場合によっては違法入場として対応する必要があるため、時間とリソースが消費されているとのことです。

PGCBの広報ディレクターであるダグ・ハーバック氏は、「これらのケースにはスタッフの多くの時間が費やされており、時には100ドル程度の金額を扱うこともあります」と説明しています。


懸念の声と反対意見

この提案に対しては、問題ギャンブルの専門家や関連団体から強い反対の声が上がっています。

ベターインスティテュートのCEO、ジョディ・ベクトルド氏は、「自己排除リストからの自動削除は危険だ」と警告しています。彼女は、自己排除を解除するには意識的な決断が必要であるべきだと主張しています。
「自己排除は非常に効果的な措置です。多くの人は逮捕やトラブルを恐れ、それが良い判断を下すきっかけになります。ですが、自己排除だけでは不十分な場合もあり、この変更はその効果をさらに弱めるものです」と述べています。

また、ペンシルベニア問題ギャンブル対策協議会のジョシュア・エルコール事務局長も、この提案に公式に反対する意向を表明しました。「この提案は、自己排除リストに登録している人や今後登録する人々にとって最善の選択とは思えません」と彼はコメントしています。


問題ギャンブルのリスクと社会的影響

ギャンブル依存症は自殺リスクの高さとも関連があり、この点を特に懸念する声もあります。ベクトルド氏は、「管理負担が増えることよりも、人命の方が重要です。自己排除リストから削除されることで自殺する人が増えるリスクを考えれば、この提案は容認できません」と主張しています。

さらに、ペンシルベニア州のウェイン・フォンタナ上院議員は、「我々州政府はギャンブル業界のパートナーですが、責任ある運営を求められています。この提案はその責任を果たしていないのではないでしょうか」と述べています。今年初め、フォンタナ議員は自己排除リストに登録された人々へのマーケティングを禁止する法案を提出しました。


ギャンブル収益と社会的責任のバランス

ペンシルベニア州では、2023年のギャンブル収益が過去最高の56億ドル(約8,736億円)を記録しました。この収益の裏には、多くの問題ギャンブルによる影響も懸念されています。今回の提案が施行されれば、州のギャンブル依存症対策に対する取り組みに大きな影響を与える可能性があります。

PGCBはこの提案に対する公的な意見を11月26日まで受け付ける予定です。この議論が、ギャンブル依存症の対策と収益のバランスをどう調整していくのか、注目が集まっています。

用語解説

自己排除(セルフ・エクスクルージョン)規則
自己排除(セルフ・エクスクルージョン)規則とは、ギャンブル依存症やそれに悩む人が、自分自身を一定期間ギャンブル施設やオンラインギャンブルサービスから排除するよう申請する仕組みです。この規則は、本人の意思に基づいて設定され、期間中は対象施設やサービスへのアクセスが禁止されます。

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