スポーツベッティング市場の縮小:2024年、小規模事業者の撤退が相次ぐ

アメリカ

2024年、アメリカのスポーツベッティング業界で、小規模事業者が相次いで市場から撤退し、大手企業が市場を独占する構図が鮮明化しています。「スポーツベッティングの墓場」とも呼ばれる現状は、業界の急激な競争激化が背景にあります。

大手6社が市場を独占

BetMGM、Caesars Sportsbook、DraftKings、ESPN Bet、Fanatics、FanDuelといった大手6社は、引き続き顧客基盤を拡大し、シェア争いを続けています。一方で、小規模事業者や独立系プラットフォームは苦戦を強いられ、多くが市場から姿を消しました。

法整備が停滞、新規参入が減少

2024年は、2018年にスポーツベッティングが各州の裁量に委ねられて以来、初めて新たに合法化した州が存在しない年となりました。唯一、ミズーリ州が11月に住民投票で合法化を決定しましたが、新規市場としてはノースカロライナ州とバーモント州の2州のみが今年ライブベッティングを開始するにとどまりました。

小規模事業者の撤退と失敗例

2024年には、5つのスポーツベッティングプラットフォームが米国市場から完全撤退、または事業を大幅に縮小しました。その中には以下の企業が含まれます:

  • Betway:9つの州で展開していましたが、収益性が見込めないとして撤退。
  • SI Sportsbook:現在撤退プロセスを進行中。
  • Unibet:2023年末に撤退を発表し、2024年に米国市場から完全撤退。
  • SuperBook:規制上の問題から事業計画が進まず、8つの州から撤退。
  • WynnBet:8州から撤退し、ネバダ州のみで事業継続。

特に、WynnBetは顧客獲得コストの高さが撤退の理由として挙げられています。

小規模事業者が直面する課題

スポーツベッティング業界の競争環境は非常に厳しく、大手企業に比べて広告やプロモーションに費用を割けない小規模事業者にとって、参入障壁は高いものとなっています。コンサルタントのブレンダン・バスマン氏は「競争が激化する中で、小規模事業者が生き残るには、自社が成功できる市場に限定して事業を展開することが重要です」と指摘しています。

イノベーションへの懸念

市場からの撤退が相次ぐことで、消費者が利用できる選択肢が減少しています。競争が減ることで、業界全体のイノベーションが停滞する可能性も懸念されています。「競争があることで、消費者に利益をもたらす新しいアイデアが生まれる。競争が減るとその機会が失われる可能性がある」とバスマン氏は述べています。

慎重な成長を選ぶ企業

一方で、Betr(ジェイク・ポールが支援するマイクロベッティングプラットフォーム)やSporttrade(株式市場風の取引を提供する企業)、Underdog Sports(ファンタジースポーツ事業も手掛ける企業)など、一部の小規模事業者は着実な成長を続けています。これらの企業は特定の市場に的を絞り、無理のないペースで事業を拡大しています。

たとえば、Betrは現在2州で事業を展開し、将来的な拡大を計画しています。Sporttradeは5州で営業中で、Underdog Sportsはノースカロライナ州のライブベッティング開始時に市場参入を果たしました。

まとめ

スポーツベッティング業界は依然として成長を続けていますが、競争の激化と高額な顧客獲得コストにより、小規模事業者が生き残るのは容易ではありません。市場からの撤退が相次ぐ中、競争の減少が業界の活力を削がないよう、企業の戦略と規制当局の動きが注目されています。

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