フィリピン上院は、長年にわたり犯罪と汚職の温床となってきたフィリピン・オフショア・ゲーミング・オペレーション(POGO)に関する最終公聴会を、2024年11月26日に実施しました。この公聴会は、POGO業界が引き起こした犯罪行為や中国による影響を徹底的に追及する場となりました。
上院議員ホンティベロス氏の厳しい指摘
調査委員会を率いるリサ・ホンティベロス上院議員は、POGO業界を「犯罪の温床であり、国家安全保障を脅かすトロイの木馬」と厳しく非難しました。ホンティベロス氏は、「POGOはオンライン詐欺、強制労働、人身売買などの犯罪に手を染めており、フィリピン国民の安全と利益を侵害している」と指摘しました。さらに、同業界が関与したとされる犯罪行為には、以下が含まれています。
- 大規模な詐欺行為
- 汚職
- 誘拐
- 拷問
- 売春
- 人身売買
POGO業界の実態:「詐欺工場」
POGOは2016年にフィリピンで運営を開始し、同国の比較的緩やかなギャンブル規制に引き寄せられたとされています。しかし、一部のライセンス取得業者が規則を遵守していた一方で、多くの業者が「詐欺工場」と化していました。
元従業員たちは、高給を謳って雇われたものの、拘束され、業績ノルマを果たすまで解放されなかったと証言しています。一部の従業員は、ノルマを達成できない場合に拷問の脅迫を受けたとも述べています。
今年7月、フェルディナンド・マルコス大統領は、POGO業界全体を禁止する大統領令を発令。「法律を軽視する行為は許されない」と断言しました。
詐欺を働いた「POGO市長」
今回の公聴会では、中国人の元バンバン市長アリス・グオ(本名:郭華萍)に関する詳細も明らかにされました。グオ氏は偽造された出生証明書を使用して2022年の選挙に出馬し、市長に当選。その後、地方都市バンバンで大規模なPOGOを運営していたとされています。
今年3月に施設が摘発されると、グオ氏は国外に逃亡。その後インドネシアで逮捕され、フィリピンに送還されました。現在は資金洗浄および人身売買の容疑で収監されています。
ホンティベロス議員は、「あなたはフィリピン国民を欺き、犯罪行為を通じて財を成した」と厳しく非難しました。そして、「法の裁きを受ける日を楽しみにしている」と結びました。
法改正の必要性を訴える
ホンティベロス議員は、マルコス大統領が発令した大統領令74号(POGOの禁止)だけでは不十分だと主張。議員は「これ以上POGOのような犯罪的な産業が再びフィリピンに現れることがないよう、立法改革を進める必要がある」と述べました。
マルコス大統領は、禁止を法律として明文化する要請を退け、大統領令が十分な抑止力になるとしています。しかし、ホンティベロス氏は国民に向けて「これがPOGOに関する公聴会の終わりではなく、改革の始まりだ」と語りかけました。
今後の展望
フィリピンは、POGOによる影響を徹底的に排除し、違法賭博が引き起こす問題を再発させないためのさらなる法整備が求められています。今回の公聴会を通じて、フィリピン国民の安全と利益を守るための改革が本格化することが期待されています。
用語解説
POGO(Philippine Offshore Gaming Operators)
国外の顧客向けにオンラインギャンブルサービスを提供する事業者のことを指します。主にオンラインカジノやスポーツベッティングの運営を行い、対象顧客はフィリピン国外に限定されているため、国内のフィリピン人は利用できない仕組みです。
主な特徴
- 設立背景: フィリピン政府は2016年にPOGOのライセンス制度を導入し、外国人向けのオンラインギャンブル市場を規制することで税収を増やすことを目的としていました。
- 監督機関: フィリピン娯楽賭博公社(PAGCOR)がPOGO事業者の監督とライセンス発行を行っていました。
- 主な市場: 中国をはじめとするアジア諸国が主な顧客層で、多言語対応のギャンブルプラットフォームを提供していました。
問題点
- 違法行為: ライセンスを持たない違法業者の存在や、顧客データの不正利用、詐欺行為などの問題が頻発。
- 犯罪の温床: 強制労働、人身売買、資金洗浄など、深刻な社会問題が指摘されました。
- 中国との摩擦: 主な顧客層が中国人であったことから、中国政府はPOGOを違法ギャンブルとして批判。両国間の緊張を高める要因にもなりました。
最新状況
2024年7月、フェルディナンド・マルコス大統領はPOGO業界の全面禁止を決定。これにより、POGOはフィリピン国内での営業を終えました。ただし、違法業者の取り締まりや再発防止に向けた課題が残されています。
要約: POGOは、国外向けのオンラインギャンブルサービスを提供する合法的な制度として開始されましたが、違法行為や社会問題を引き起こした結果、フィリピン政府によって禁止されました。